iGEM について

iGEM Foundation とは

iGEM Foundation とは、「合成生物学」の発展を目指す独立した NPO 団体です。「合成生物学」と聞くと、複数の生物を組み合わせたようなキメラを想像する方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は少し異なります。「合成生物学」とは、簡単に言うと、遺伝子組み換えによって、微生物をはじめとする生物の能力を自由に編集することで、様々なことに役立てることを目指す学問です。詳しくは、合成生物学とは
のページをご参照ください。

iGEM Foundation の活動内容の一環として、iGEM competition という合成生物学の世界大会が年に一回開催されており、私たちは早稲田大学チームとして参加しています。iGEM competition では、世界中の学生がチームを組んで研究成果を発表し、研究成果の素晴らしさだけではなく、プレゼン力、合成生物学を普及するための活動などが総合的に評価されます。元々 2003 年に MIT の自己研鑽プログラムとして始まったものですが、現在は 46 か国から累計で 3600 以上のチームが参加しており、世界的な規模の大会となっております。

過去のiGEM competitionの様子
過去の iGEM competition の様子

実際のプロジェクト例としては、大会が始まった当初はバナナの匂いがする大腸菌(余談ですが、大腸菌の匂いというのは、古くなったおでんが冷えた匂いに似ていると思います。先輩はカップラーメンの匂いと言っていたので、人によって全く違うかもしれませんが)などのユニークなプロジェクトが多く存在していました。しかし、近年の大会では、エネルギーを生産して貯蔵する微生物など、社会課題を解決することを目指すものが主流になってきています。このように、合成生物学を用いて社会課題を解決するという風潮は世界中に広まり始めていて、iGEM 卒業生によるバイオベンチャーのスタートアップなども立ち上がってきています。日進月歩で進化する合成生物学の世界の中で、私たちは日々研究活動に励んでおります。

ここからは、少しだけ私たちがどのようにして遺伝子を組み替えているかについて技術的にご説明したいと思います。遺伝子を組み替えるということは、つまり、DNA の内容を変えるということに等しいです。そして、DNA は、決まった機能を指定する配列ごとに分けて考えることができます。例えば、「瞳の色が黒色であることを指定する DNA」や、「お酒に強いことを指定する DNA」などです。そして、これらの DNA は一つ一つ、”Biobrick”パーツという名前で登録されています。ですので、私たちが DNA を組み替える際には、これらのパーツを自由に組み合わせて、理想の機能を持つ生物を作ることができるのです

iGEM の評価基準

iGEM は各チームが作成する wiki と呼ばれるホームページJamboreeと呼ばれる大会当日のプログラム中の質疑応答で評価されます。 また、iGEM の賞には以下があります。それぞれ異なった視点から評価されますが、偏らず、すべての完成度が高いチームが賞を獲得することが多い印象です。

  • 総合的な賞として
    Grand Prize, 1st runner up, 2nd runner up, Finalist, top 10
  • track と呼ばれるプロジェクトの分野ごとの賞として
    Track Award, Track Award nominee
  • 審査基準の中で特に抜きんでていた項目の賞として
    Special Prize, Special Prize nominee
  • 絶対評価の賞として
    Gold Medal, Silver Medal, Bronze Medal

があります。

総合的な賞ではプロジェクト全体の実現可能性や実験結果、モデリング結果、社会的活動などが評価されます。分野ごとの賞でも総合的な賞と同様に評価されます。
審査基準の中で特に抜きんでていた項目の賞は項目ごとに設けられた基準に沿って評価されます。例えば、Best Education では、

1.どれだけ深い学びや議論を提供したか 2.他の人が見られるように文書化されているか 3.よく練られているか 4.チームの活動によって、より多くの人々が合成生物学に関わり、貢献し、そして参加できるようになると確信したか

が評価基準になっています。

iGEM の年間スケジュール

各 iGEM チームは上記の評価基準を満たすため、日々実験やモデリング、社会活動に取り組んでいます。公式に発表されている1年のスケジュールは以下の画像の通りです。

2月に活動を開始し、まず実験拠点の確保や資金調達を行います。他のページにもある通り iGEM に参加するには非常に多くの費用がかかります。(支援リンク)その後、およそ3カ月をかけてプロジェクトの案を出し合ったり実験をデザインしたりして、今後の活動を決めていきます。この段階でどれだけ詰められるかが成功の鍵を握るとも言えます。この段階で予備実験を行えると良いと思われます。諸々が決定したら6月からついに実験やモデリングを開始します。生物を扱うという性質上安定して結果を出すのは難しく、知識や根気、技術等様々な力が必要になります。6、7、8月でそれらを集中的に行います。8 月からは結果をまとめる段階に入ります。上の評価基準でも話した通り、行った結果をホームページにまとめないと評価してもらえません。また、良い結果が出てたとしてもそれが伝わらなければ評価されません。行ったことをきちんと分かりやすく伝わるようにまとめるのは思った以上に労力がかかります。9月になるといよいよ Jamboree が近づいてきます。プレゼンテーションの準備をしたり質疑応答対策をしたりと活動も大詰めに入っていきます。そして10月末に本番である Jamboree がフランスのパリで行われます。ここに記していない活動に社会活動や教育活動があります。これらはプロジェクトを進めていく中で必要な時に適当に行います。これらも重要な評価基準になるので、忙しい中でも質の高いものを行う必要があり、大変です。

iGEM 早稲田大学チームの日々の活動

私たち iGEM 早稲田大学チームの日々の活動を紹介します。私たちは週一回の定例ミーティングで進捗報告や全体連絡を行っています。細かなプロジェクト作成は班に分かれて行います。詳しくはこれらのページをご覧ください。(Wet, Dry, HP, Wiki・イラストのリンク)その他に、プロジェクト立案のため、過去の iGEM チームの wiki を回し読みする輪読会や他大学の iGEM チームと共同のイベントなども行っています。また、どの班に所属していても多くの人が意欲的に常に論文を読んだり調べものをしたりしています。学ぶことが好きな人には最高の環境であると言えます。難しそうなことをやっているように見えるかもしれませんがそんなことはありません。全員が何も知らない状態から頑張って調べながらやっています。大学生活で何か成し遂げたい方や合成生物学に興味ある方、またはビデオやイラスト作成、アントレプレナーシップに興味のある方はお気軽にご連絡ください。

参考 :